派遣の雇止めって違法ではないの?違法になる4つのケースや対処法など徹底解説

この記事の管理者株式会社アドバンスフロー
代表取締役 中塚 章浩

大手総合人材会社を経て、リクルートに勤務。その後、現在の株式会社アドバンスフローを設立。派遣業務、転職エージェント業務、新卒採用代行業務など、幅広い業務を経験。

「派遣の雇止めって違法ではないの?」あなたは今こんなことを考えていませんか?

勤務先の一方的な都合で労働契約を打ち切る行為は、労働者の働く権利を阻害していると言えます。

実際、もしあなたが派遣会社から「申し訳ないけど今回で派遣先との契約を終了してほしい」と言われたら、この雇止めは違法行為に該当する場合があります。

今回は派遣の雇止めが違法になる具体的な事例や、雇止めに遭った時の対処法などを解説します。

雇止めに遭い困っている方にとって役に立つ内容になっているかと思うので、ぜひご一読ください。

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目次

派遣社員の雇止めとは?雇止めの意味を解説

まずは派遣社員の雇止めとは、どのような意味をもつのか解説します。

言葉の意味を正しくとらえていないと、これから解説する事項がよく理解できなくなる可能性があります。

ブログや知恵袋では、派遣の雇い止めに関する質問も多いです。

雇止めは意味を勘違いしている人も多い言葉だと思われるので、チェックしてみてください。

雇止めとは

雇止めとは派遣社員や契約社員など有期雇用契約の従業員について、契約更新をせずに労働契約を終了させる行為を指します。

原則として、契約期間途中で従業員を解雇する行為は雇止めとは呼ばないので、注意してください。

派遣切りや解雇との違い

雇止めと意味を混同しやすい言葉として「派遣切り」や「解雇」があります。

これらの言葉が持つ意味は、以下の通りです。

  • 解雇:労働契約の期間の途中に、派遣先の都合で一方的に労働契約を打ち切る行為
  • 派遣切り:派遣社員の労働契約において期間満了後に更新せず契約を打ち切る行為、及び期間途中に契約を打ち切る行為

雇止めと解雇は、労働契約を終了させるタイミングが、期間満了時なのか期間継続中なのかという点で異なります。

派遣切りは、雇止めと解雇、どちらの意味も含んだ表現です。

【2020年】派遣の雇止め・派遣切りの現状

派遣の雇止めがどのような意味を持つか、ご理解いただけたと思います。

次は雇止めの違法性の説明に入る前に、現在の日本における派遣の雇止め・派遣切りの現状を見ていきましょう。

雇止めの状況を知ることで、問題の深刻さが伝わるかと思われます。

コロナの影響で派遣の雇止めは急増

旅行や宿泊、飲食など様々な方面で悪影響を与えている新型コロナウイルスですが、派遣の雇止め急増の大きな要因にもなっています。

読売新聞が2020年12月28日に発表した記事によると、新型コロナウイルス感染拡大の影響により解雇や雇止めされた労働者は約8万人近くにものぼるということです。

参考:読売新聞

国内ではじめて新型コロナウイルスの感染者が確認されたのは2020年の1月のことなので、わずか1年足らずでコロナが原因で仕事を失った人が8万人もいることになります。

このうち派遣の雇止めが何人を占めるか正確な数値は分かりません。

雇用形態別に統計を取り始めた5月25日以降、非正規雇用の解雇・雇止めは3万8,009人に上るという結果は出ているので、派遣の雇止めの数も相当な数がいると推察されます。

ペース的には9月に全体の解雇・雇止め件数が6万人を越えた以降、一時増加のペースが緩んだですが、12月に入りまた増加傾向がみられるそうです。

このまま新型コロナウイルス拡大に歯止めがかからないと、雇止めの件数もどんどん増えていくでしょう。

派遣の雇い止めを回避すると雇用調整助成金がもらえる?

労働者としては「業績が悪化して苦しいのは分かるけど、何とか雇用は継続してほしい」と思うことでしょう。

実は企業にとっては、派遣の雇い止めを回避すると国から助成金がもらえる制度があります。

この制度を雇用調整助成金といい、事業主が解雇を避け、雇用する労働者を一時的に休業、教育訓練又は出向させることにより雇用を維持する場合に、休業、教育訓練又は出向に係る手当等の一部を助成するという制度です。

対象となるのは、景気の変動などの経済上の理由による企業収益の悪化から生産性が減少し、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主です。

つまり従業員の解雇を避けるための措置を講じた会社に対しては、助成金が支給されることになります。

雇用調整助成金は労働者にとっては解雇や派遣の雇い止めに遭う可能性を減らせ、会社にとっては手当を受けられるので、双方にメリットが大きい制度です。

さらに厚生労働省は2020年6月16日付で、派遣元事業主に対して雇用調整助成金の活用を促す主旨のパンフレットを公表しました。

参考:厚生労働省

国としては、派遣会社に雇用調整助成金を活用してもらうことで、派遣労働者の雇用の維持に努めるという意図があります。

特定業種に対してこのように国が依頼するのは珍しいことなので、非正規雇用の離職増加を、国も重く受け止めている証拠だと言えるでしょう。

2020年4月から派遣の雇い止めに関するルール変更について

派遣の雇止めの現状を語るには、2020年4月から適用となった派遣の雇い止めに関するルール変更について触れておかねばなりません。

弱い立場に置かれることが多い派遣労働者の保護を目的とした法律である派遣法が、改正されました。

改正の主旨は、派遣社員の「同一労働同一賃金」の達成です。

これまで仕事内容はほぼ変わらないにも関わらず、派遣社員と派遣先の正社員の間で待遇が大きく異なる点が問題視されていました。

このような不合理な賃金格差を是正するために、今回の法改正では以下の文言が追加されます。

7. 労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、第一項の規定(新設)により労働者派遣契約を締結するに当たっては、あらかじめ、派遣元事業主に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者派遣に係る派遣社員が従事する業務ごとに、比較対象労働者の賃金その他の待遇に関する情報その他の厚生労働省令で定める情報を提供しなければならない。

引用元:e-gov

上記の文言を簡単にまとめると、派遣社員を募集する派遣先企業は、派遣会社に対して、派遣社員が従事する業務ごとに賃金やその他待遇に関する情報を提供しなければいけないということです。

賃金の決め方に関しては、派遣先が一方的な都合で決められないよう、以下のいずれかの方法によると定められました。

  1. 派遣先均等・均衡方式:派遣先の正社員等との待遇の均等・均衡を図る
  2. 労使協定方式:労使協定による決定

本改正により、派遣社員が今まで我慢を強いられていた不合理な賃金格差が改善する可能性が高いです。

新型コロナウイルスの影響で雇い止めがこれまで以上に頻発し、ただでさえ不安定な働き方を強いられる派遣社員にとって、さらに向かい風が吹いているのは事実です。

しかし雇用調整助成金の活用や同一労働同一賃金の法定化等、国をあげて派遣が働きやすい環境の整備を進めています。

新型コロナウイルスが収束に向かえば、派遣社員にとって明るい未来が到来する可能性が高いと言えるでしょう。

人材派遣の雇止めって違法ではないの?

本題の人材派遣の雇止めは違法だと言えるのかという点に説明を移します。

雇止め自体が違法行為に相当すれば、労働者は雇止めを受けても「違法行為なので従う義務はありません。」と突っぱねられます。

違法行為ならば、勤務先への意思の伝え方も、強い口調で大丈夫です。

雇止めの違法性については、下記の通りです。

雇止め自体は適法だと考えられる

結論から言うと、雇止め自体は適法行為だと考えられます。

あらかじめ定められた契約期間が満了したという理由で、契約を更新しないことは何ら悪いことではありません。

ただし本来なら違法とは言えない雇止めでも、その理由や手続きの不備によっては違法行為に該当する恐れがあります。

派遣の雇止めが違法になりうるケース

派遣の雇止めが違法になり得る代表的な4つのケースを紹介します。

30日前に雇止めの予告・通知をしていない

雇止めを行う派遣労働者に対して会社は何日前にその事実を告げるべきかというと、30日前に雇止めの予告・通知をする必要があります。

つまり1ヵ月以上前に雇止めの告知を受けていないと、違法行為を主張できる可能性が高いです。

厚生労働省が定めた有期雇用に関する告示によると、以下のいずれかの条件に該当する派遣労働者については予告通知を行なわなければならないとされています。

  1. 契約を3回以上更新している
  2. 雇い入れの日から起算して、1年を超えて勤務を続けている

30日前に連絡が必要なのは正社員の解雇の場合も同様です。

正社員の解雇では予告のタイミングが30日前を過ぎてしまうと、会社は従業員に対して、30日分以上の賃金相当の解雇予告手当を支給する義務が発生します。

一方、雇止めの予告の場合、解雇予告手当を支払えば30日の期間を短くすることが可能です。

雇止めの理由を明示していない

会社は雇止めを実施する場合、雇止めの理由を明示しなければいけないとされています。

つまり雇止めの際に、「派遣社員を雇い止めして何が悪い」というように理由を明示されなかったら違法の可能性が高いです。

先ほどの厚生労働省が定めた有期雇用に関する告示でも、雇止め理由の明示については明文化されています。

使用者は、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを送付しなくてはいけません。また、雇止めの後に労働者から請求された場合も同様です。

引用元:厚生労働省が定めた有期雇用に関する告示

この時提示する雇止めの理由は「契約期間の満了」とは別の理由でなければなりません。

例えば「担当の業務が終了・中止したため」「事業縮小のため」などです。

雇止め理由の明示方法までは指定されていませんが、雇止めの理由に疑義がある時は書面で残してもらった方が後に争う際の証拠になり得ます。

客観的合理性・社会通念上相当とは言えない理由

雇止めの理由に関しては明示されれば何でも認められるわけではありません。

雇止めの理由には、客観的合理性・社会通念上の相当性が求められます。

従って、客観的合理性・社会通念上相当とは言えない雇止め理由の場合、違法となる可能性があります。

客観的合理性がある理由とは、すなわち誰が見ても解雇はやむを得ないと言えるような理由のことです。

また社会通念上相当性がある理由とは、労働者の行為や状況に照らし合わせて雇止めが相当な処分だと言えるかという視点です。

例えば労働者が仕事でミスをしたから雇止め処分とした場合、1度のミスで退職にまで追い込まれるとは客観的合理性・社会通念上の相当性、どちらの基準にも適合しないと考えられます。

また、妊娠や産休を理由とする解雇、勤務態度の悪さを理由とする解雇も正当な理由として認められにくいです。

このように、雇止めの違法性を考えるにあたっては「雇止めの理由」がとても重要な意味を持ちます。

後のトラブルを避けるためにも、雇止め理由は確実に明示してもらいましょう。

更新の有無や判断基準を明記していない

更新の有無や判断基準など、契約時点で伝えるべき事項が明記されていないケースも違法の可能性が高いです。

厚生労働省が定めた有期雇用に関する告示では、会社は契約締結時に以下の事項を明示する必要があると定められています。

  1. 契約更新の有無
  2. 契約を更新する場合があると明示した時は、契約を更新する場合またはしない場合の判断基準
  3. 上記2つの内容を変更する場合

明示すべき判断基準の内容は「期間満了時の具体的な業務量により判断する」「労働者の能力によって判断する」などの書き方で良いとされています。

派遣の雇止めに関する法律

派遣の雇止めに関する法律・法規制の内容をいくつか紹介します。

派遣では「3年ルール」や「5年ルール」といった縛りが設けられていますが、これらのルールも法律で規定されています。

違法な環境下で働かされないためにも、雇止めに関する法規制はきちんと理解しておきましょう。

派遣法の3年ルール

よく聞く3年ルールとは、同一の職場・部署では有期雇用の派遣社員として最大3年までしか働くことができないという雇止めに関する規制です。

3年を超過したら別の派遣先に移るか、引き続き同じ職場で勤務したい場合は正社員や無期雇用派遣社員など、働き方を変えなければなりません。

3年ルールは3年が経過したら働き方や職場を変えないといけないため、一見すると派遣社員に不利な規制に思えますが、そうとも言えません。

早く正社員になりたいと考えている派遣社員にとっては、3年経てば正社員へと雇用形態を変えられる可能性が高くなります。

ただし途中で別の課に異動してしまうと期間がリセットされて、また3年やり直す必要が生じるので注意してください。

ちなみに、派遣期間の制限を過ぎた最初の日を『抵触日」といい、例えば2020年4月1日に就業を開始した人の抵触日は2023年4月1日です。

労働契約法の5年ルール

5年ルールとは有期労働契約が反復して更新を続け通算労働期間が5年を超えた場合、労働者の申し込みによって、期間の定めのない労働契約に転換できる制度です。

5年ルールは2012年に改正された労働契約法によって、新たに導入されました。

5年ルールの内容を聞いて「あれ?3年経過すれば派遣社員は正規雇用に転換できるのでは?」と疑問を抱いた人もいるでしょう。

ここは混乱しやすいポイントですが、3年ルールは派遣先との関係を示したルールで、一方5年ルールは派遣会社(派遣元)との関係を規定しています。

有期労働契約の更新を続け5年を超えれば、派遣会社との労働契約が有期労働契約から無期労働契約へと転換できるという意味です。

派遣社員の労働契約は一般の労働契約とは異なり、勤務先ではなく派遣元である派遣会社と契約を取り交わします。

無期労働契約になるとは、派遣会社の正社員として働けるようになることを指します。

無期労働契約に転換すると3年ルールの適用対象外とされるため、同じ職場で3年以上派遣として働いても問題ありません。

3年ルールも5年ルールも、不安定な立場に置かれがちな派遣労働者の保護を目的とした法規制となります。

2018年問題が話題に!

2018年問題とは、上述した3年ルールと5年ルールの影響が出始める2018年以降に起こるであろうと想定される問題を指します。

3年ルールを定めた労働者派遣法は2015年に改正され、5年ルールを規定した労働契約法の改正は2012年に行われたので、どちらも適用開始となるのが2018年以降です。

具体的に起きる問題としては、労働者を長期にわたって雇用することを嫌がる企業側が、3年や5年の期間が到来する前に労働者を大量に解雇するのではないかという点です。

企業からすれば派遣労働者は使い勝手が良い存在だと言えます。

契約更新があるので、特定の期間だけ働いてもらい必要なくなったらサヨナラするということがしやすいためです。

このため、正社員や無期雇用契約への転換を勘弁してほしいと、企業はルール適用になる前の派遣切りを考える傾向があります。

上記の理由から、2018年以降は雇止めが加速すると見られていました。

実際は新型コロナウイルスの影響により、実際にどれほど2018年問題の影響があったのかは分かりません。

ただ派遣の雇止めが増加傾向にあることは確かです。

派遣の雇止め法理

5年ルール適用の根拠にもなった、派遣の雇止め法理について紹介します。

雇止め法理とは過去の最高裁判所の判例をもとにした理論で、一定のケースに該当する場合、雇止めを無効化するという内容です。

雇止め法理が適用となるのは、以下の2つの有期労働契約に該当する場合です。

  1. 過去に何度も更新を続けてきた有期労働契約で、雇止めが無期労働契約における解雇と社会通念上同一視できるもの
  2. 有期労働契約の期間満了時に、労働者が契約の更新への期待を持つことについて合理的な理由があると認められるもの

上記いずれかに該当する場合、その雇止めが客観的合理性を欠き社会通念上の相当であると認められない時は、雇止めは認められません。

この雇止め法理は、労働契約法19条において明文化されています。

第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、

使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

引用元:e-gov

派遣の無期雇用ルール適用を回避するための雇止めについて

無期雇用ルールの適用を回避するために、無期転換申込権が発生する5年の到達前に雇止めを実施する行為は、法的に望ましいとは言えません。

このような雇止め行為は違法となる可能性が高いです。

もう少しで5年を迎えるというシチュエーションで雇い止めを受けた場合、上記の雇止め法理に照らし合わせると、この雇止め行為には「客観的合理性」と「社会通念上の相当性」の2つが必要です。

派遣の雇止めに関する判例

派遣の雇止めに関する判例をいくつか紹介します。

能力不足による雇止めが争われたケース

参考:広島駅前法律事務所

雇止めが正当と言えるかどうかは、前述の通り、雇止め理由に客観的合理性と社会通念上の相当性が認められるかが争点です。

能力不足による雇止めの場合、どの程度のケースならば上記の要件が認められるか、判例をもとにチェックしていきましょう。

このケースでは経営が悪化を極め、人件費の削減を行う必要があったこと、業務効率の見直しの必要性があったことなどを理由に原告に対して雇止めを通告しました。

加えて、原告では仕事上のコミュニケーションが円滑にはいかず、その原告のコミュニケーション力不足も雇止めの一因を形成したようです。

この事例では人件費の削減や業務効率の見直しといった一般的な理由では、雇止めの合理性を肯定するには不十分だとし、雇止めは無効だと判じられました。

また原告のコミュニケーション力不足に関しては、問題があるといっても、雇用の継続が難しいと断ずるレベルには達していないと述べています。

能力不足を理由とする解雇は、雇用関係を維持できないほどの強烈なレベルの能力不足の場合、解雇が認められる可能性もあります。

他の従業員と比較して相対的に低いと言える程度であれば、基本的にその解雇は不当だと考えられるでしょう。

労働者がもつ契約更新への期待が合理的かどうか争われたケース

参考:労働基準判例検索

派遣の雇止め法理のところでもチェックしたように、労働者が契約更新の期待を持つことが合理的だと言える場合、客観的合理性・社会通念上の相当性を備えていなければ雇止めは認められませんでした。

では、労働者が契約更新の期待を持つことが合理的だと言えるケースとは、どのような場合なのでしょう。

判例をもとに具体的な基準を探っていきましょう。

丸島アクアシステムズ事件では、雇用継続に対する合理的な期待は認められないとして、雇止めを有効だと判じています。

具体的な状況は6ヵ月の雇用契約を10回反復更新した労働者に対する雇止めです。

  1. 使用者は長期雇用を期待させる言動をしていないこと
  2. 実質的な審査によって契約更新を行っていた

等の事情があったので、雇用継続に対する合理的な期待は持てないと判断されました。

派遣が法律上問題がある雇止めにあった際の対処法

雇止めはある日、突然言い渡されます。

契約更新への期待を当然に抱いていた人にとっては、寝耳に水です。

パニックに陥る可能性も高いですが、冷静な頭で考える必要があります。

ここでは、派遣が雇止めにあった際の対処法を紹介します。

雇止めが違法だと主張するための証拠集めを行う

雇止めが違法だと主張するためには、まず証拠集めを行いましょう。

準備すべきは雇止め法理の適用があることや、雇止めの理由が正当ではないと言える根拠です。

雇止め法理の適用を示す証拠としては、勤続年数や自身の業務内容、更新回数や更新手続きの内容が分かるものなどが該当します。

また雇止めの理由が不当であると示す証拠としては、雇止めの理由が記載されたメールの文章や面談時のメモ、離職票等が考えられます。

雇止め理由証明書を交付してもらう

確実に雇止め理由が分かる書類として、雇止め理由証明書を交付してもらう方法もあります。

使用者は雇止め理由の明示後に従業員から雇止め理由についての証明書を請求する必要があった場合、遅滞なくこれを交付しなくてはならないと定められています。

支援機関に相談する

「雇止めが違法かな」と感じたとき、相談できる支援機関はいくつもあります。

まず考えられるのが、労働基準監督署です。

労働基準監督署は労働基準法をはじめ、労働関係法令に違反した行為を取り締まる機関です。

逆に言うと、法律違反に該当する場合でしか相手にされない可能性もあるので注意してください。

他にも国の機関だったら、労働局の総合相談コーナーや労働相談ホットラインなどが利用できます。

雇用保険の給付金手続きを開始する

雇止めに違法性を追求できないと分かったら、退職後に受け取る雇用保険の給付手続きを開始しましょう。

雇用保険の給付には、まずハローワークで求職の申し込みを行う必要があります。

雇用保険給付手続きの流れは以下の通りです。

  1. ハロワークで求職の申し込み
  2. 後日、雇用保険受給者初回説明会を受ける
  3. 後日、失業の認定
  4. 受給

最低でも、計3回はハローワークに出向く必要があるので注意してください。

派遣の雇い止めで訴える場合は?

派遣の雇い止めで訴えたいと考えたら、労働審判の手続きを行いましょう。

労働審判とは、労働問題を専門に扱う審判官・審判員が問題解決の判断を下す制度です。

裁判ではありませんが、労働審判の結果には法的な拘束力を持っています。

労働審判は通常訴訟と比べ、少額で申し立てることができるのでおすすめです。

派遣の雇止めは失業保険の補償をいつからもらえる?

派遣の雇止めにあった場合、失業保険の補償はいつからもらえるのか解説していきます。

1ヵ月待期ルールが改正になったのですぐもらえる

契約満了後でも1ヵ月間は雇用保険の被保険者資格を継続する1ヵ月待期ルールは、改正により廃止とされました。

このため、失業保険は退職後すぐもらえます。

ただし、離職日の翌日から数えて7日間は待期期間があるため、給付を受けられないので注意してください。

退職理由が自己都合の場合2ヵ月間の給付制限期間が生じる

離職日の翌日から7日が経過すれば失業保険はもらえるとお伝えしました。

しかし、これは退職理由が会社都合のケースに限ってです。

自己都合退職の場合は7日間の待期期間後に、さらに加えて2ヵ月が経過した後に支給を受けることが可能です。

退職理由によって給付金の受け取り開始時期が異なるので、退職理由はきちんと把握しておきましょう。

失業保険にともなう派遣社員の緩和条件

失業保険取得のためには、前提として離職日以前の過去2年間のうち、通算1年以上雇用保険に加入する」という条件を満たす必要があります。

しかし派遣社員の契約期間が満了し、次の仕事を希望していたにも関わらず契約更新を打ち切られた場合は「特定理由離職者」に該当し、受給要件が緩和されます。

特定理由離職者が離職したケースでは「離職日以前の過去1年間で通算6ヵ月以上、雇用保険に加入」という条件です。

派遣の雇止めは失業保険の補償をいくらもらえる?

多くの人が気になると思われる、失業保険の金額をいくら受け取れるか解説します。

失業保険の金額

参考:雇用保険法改正リーフ

失業保険の金額は、「基本手当日額(離職日直前の6ヵ月に毎月決まって支払われた賃金の合計÷180)×50~80%」で計算可能です。

ただし、基本手当日額は下記の通り、上限が定められています。

30歳未満 6,750円
30歳以上45歳未満 7,495円
45歳以上60歳未満 8,250円
60歳以上65歳未満 7,083円

派遣社員の雇止めに関するQ&A

派遣社員の雇止めに関して、よく抱きやすい疑問をQ&A方式で紹介します。

派遣で雇い止めにあった時は引き継ぎが必要?

派遣で雇止めにあった時に引き継ぎが必要かどうかは、法律上問題がある雇止めかどうかで異なります。

法律上問題がある雇止めであれば引き継ぎは必要ないですが、法律上問題がない雇止めでは引き継ぎが必須です。

引き継ぎ書には以下のような事項を記載しましょう。

  • 日々の仕事の流れ(できれば毎日・毎月・年間に分ける)
  • 日常業務の詳細
  • 書類の作成方法や注意点
  • パソコンソフトやコピー機、備品の使用法
  • 庶務のやり方
  • 取引先やお客さんの名前が分かるリスト

派遣の雇止めで残りの期間に有給は利用できる?

有給休暇は条件さえ満たしていれば、雇用形態にかかわらず派遣社員でも取得可能です。

もちろん、雇い止め日まで有給休暇の日数が余っているのであれば、有給消化しても問題ありません。

派遣社員の有給日数は条件を満たしてさえいれば、1年ごとに法定の日数が付与されます。

  1. 雇用されてから6ヵ月が経過していること
  2. 算定期間の8割以上出社していること

上記の条件を満たすと、有給休暇日数が10日間付与されます。

そこからは1年6ヵ月目で11日、2年6ヵ月目で12日間と、毎年1日ごとに付与される日数が増えていく仕組みです。

派遣の雇い止めの事実は履歴書に何と記載すれば良い?

転職活動で使用する履歴書や職務経歴書では、雇い止めの事実は「期間満了により退職」と記載すれば、問題ありません。

契約を更新されない理由に関してまで記載しなくても良いとされるのが一般的です。

派遣での職歴を履歴書等に記載する場合は「派遣元」「派遣先」「派遣期間」「業務内容」を明記しましょう。

派遣の雇い止めで退職する際の挨拶はどうすれば良い?

派遣社員とはいえ、お世話になった派遣先の人たちへは退職時に挨拶をしておきましょう。

退職時の挨拶のポイントは、あまり長くならないよう簡素な挨拶を心がけることです。

仕事中の方がいる場合もあり、職場での思い出や退職理由などについて何分もかかって語られると、困ってしまいます。

派遣社員が退職時の挨拶に伝えるべき内容は、以下の通りです。

  • 名前と所属
  • 退職日
  • 簡単な退職理由
  • 感謝の気持ち

退職理由が個人的なもので他人に伝えたくない内容であれば、「一身上の都合」としてもらえれば大丈夫です。

余裕があれば、「今後の発展をお祈りします。」という文言を添えると印象が良くなる可能性が高いです。

派遣切りの前兆となるサインはある?

派遣切りは突然起こるものなので、前兆を見極めることは難しいです。

強いてあげるならば、勤務先の業績が悪化していると派遣切りが起きる可能性が高いと考えられます。

派遣切りって当たり前のことなの?

派遣切りにあうと「自分は切られるほど無能だったのかな?」とショックを受ける人もいるでしょう。

しかし、派遣切りは当たり前に行なわれていることなので、あまり気にしすぎる必要はありません。

上述の通り、2020年の5月25日以降だけでも、非正規雇用の解雇・雇止めは5万人以上にも及びます。

雇い止めの理由も、自分のことというより業績悪化など会社が原因の場合が多いです。

「自分が悪かったのかな」と感じると自尊心がなくなり、転職活動に悪い影響を及ぼすかもしれないので悩みすぎないでください。

65歳以上でも雇止めに遭うことはある?

65歳以上など年齢を理由として、雇止めを行うことは合法だと考えられています。

最高裁の判例で、一定の年齢(65歳以上)に達したために契約更新を行わない旨の就業規則の規定は、認められると判じられています。

正社員のような無期雇用契約において定年制が設けられているのはご存知の通りですが、派遣でも同様に年齢上限規制はあるのです。

派遣であれば、何歳でも働けると捉えないよう、注意しましょう。

雇い止めは拒否できる?

基本的に雇止めの拒否は認められていませんが、違法な雇止めであれば拒否可能です。

例えば5年ルールに違反して雇止めを行おうとする会社の命令は、拒否できます。

5年ルールによる無期雇用契約への転換は従業員からの一方的な通知で十分なので、会社から許可をもらう必要はありません。

5年ルールを適用したいと要望を出したにもかかわらず、会社が受け入れずに雇止めまで行うのであれば、違法を主張できます。

雇止め理由証明書があれば違法を主張しやすいので、余裕があれば申請してください。

雇い止めにあった際に派遣先にお菓子(菓子折り)は必要?

中長期の派遣スタッフの場合、お世話になった人にお菓子を配る派遣社員も多いです。

ただし明確な基準があるわけではないので、挨拶さえしっかりできていれば、お菓子を配らなくても問題無いと思われます。

職場の雰囲気による部分が大きいので、気になる方はどのようなしきたりがあるか、職場の人に確認してみてください。

まとめ

派遣の雇い止めの違法性について、様々な観点から述べてきました。

文章量が多くて読むのが大変だったと思いますが、あらためて覚えておいてほしいのは派遣の雇い止めが違法になる、以下の4つのケースです。

  1. 30日前に雇止めの予告・通知をしていない
  2. 雇い止めの理由を明示していない
  3. 客観的合理性・社会通念上相当だと言えない理由
  4. 更新の有無や判断基準を明示していない

また派遣の雇い止めには、3年ルールや5年ルールという独特の縛りがあるので、こちらも合わせて覚えておきましょう。

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