「派遣と請負の違いがよく分からない!」あなたは今このようにお考えではないでしょうか?
この記事では、派遣と請負の違いをメリットとデメリットも含めて分かりやすく解説しています。
さらに、この記事を最後まで読めば、派遣や請負と似た意味を持つ言葉との違いも知ることができます。
派遣と請負の違いが分かり、あなたにとってどちらが自分に適した働き方なのか判断する際の一助になれば幸いです。
ここでの「請負」は、ご自分の勤めている会社が、お客様の会社から業務を請け負い、その仕事をあなたが任された場合をさします。
個人事業主(フリーランス)が請負で業務を受注するケースでの比較ではありませんので、ご注意ください。
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目次
派遣と請負の違いは?
簡単に言えば、派遣と請負では以下の違いがあります。
- 指示や命令を誰から受けるか
- 契約の相手方に提供する内容が人か成果物か
それぞれの違いの具体的な内容を見ていきましょう。
指揮(指示)命令権がどこにあるか
請負は雇用主(労働者が所属する会社)から指揮命令を受けて働きますが、派遣は(あなたが所属する)派遣会社ではなく、労働者が働く場所である派遣先企業から指揮命令を受けるという違いがあります。
一般的には、雇用主から指揮命令を受けるのが当然だと考えますよね。
請負の場合は、そのルールが当てはまります。
しかし派遣は労働契約の仕組みが通常の雇用契約とは異なるので、指揮命令権の所在も変わってくるのです。
派遣は、派遣会社(派遣元)と労働者が直接契約を交わすだけではなく、派遣会社・派遣先企業・派遣社員の三者契約の形をとります。
そして、雇用関係があるのは派遣会社との間ですが、指揮命令権は派遣先企業にあるのです。
派遣社員は派遣先企業の指揮命令を受けて、日々の業務に取り組みます。
労働契約は派遣会社との間で締結されているため、次の仕事の紹介や給料の支払いは派遣会社が行います。
このように、派遣先企業と派遣会社で役割が変わる点が派遣の特徴です。
まとめると、派遣と請負の大きな違いは「雇用主に指揮命令権があるのか」という点です。
提供する内容が成果物か人か
契約の相手方に提供する内容が成果物か人かという点も大きな違いです。
- 派遣:派遣社員(人)
- 請負:成果物
派遣とは、派遣会社が自己の雇用する派遣社員を、派遣先企業の指揮命令を受けて派遣先企業のために働かせることです。
つまり、労働者派遣契約で提供する内容は派遣社員となります。
派遣会社は派遣先企業に派遣社員を提供することで、報酬を受け取っています。
一方、請負は仕事の完成を目的としているため、提供する内容は成果物です。
(請負)
第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
引用元:e-GOV法令検索「明治二十九年法律第八十九号 民法」
請負契約は注文主と請負業者間で締結されますが、請負業者は注文主に対して成果物を納品することで報酬を得ます。
そして、請負業者で勤務する従業員は成果物の納品のために、雇用主である請負業者から指示命令を受けて業務に取り組みます。
このように派遣契約では提供する内容が派遣社員(人)、請負契約では成果物という点が大きな違いです。
派遣社員として働くメリットは?
派遣社員として働くのメリットは「希望に合った働き方を実現させやすい」というものです。
派遣は労働時間や休日、仕事内容など自分の希望を反映させやすい点が大きなメリットです。
派遣は正社員と比べると自由度が高い働き方であり、ライフスタイルに合わせて働くことができます。
例えば以下のような点は自分で選ぶことが可能です。
- 職種
- 勤務時間
- 勤務日
- 残業の有無
- 勤務地
- 給与
例えば「勤務時間は1日6時間、勤務日は週4日まで」という希望も通ります。
資格取得の勉強時間を確保するために労働時間を抑えたい人や、いきなり正社員になるのは怖いからまずは短時間勤務で慣らしたいという人にはおすすめです。
また、派遣では様々な仕事があるので、仕事内容の選択肢が多い点も魅力。
一般事務やデータ入力などのオフィス派遣、商品の仕分やピッキングなどの軽作業派遣、IT系やWeb系などのエンジニア派遣等があります。
このため、色々と経験したい人や自分に合う仕事を見つけたい人に適した働き方です。
仕事を見つける際は条件を設定して探すことが可能ですし、派遣会社に希望を伝えてみるのも良いでしょう。
派遣社員として働くデメリットは?
派遣社員として働く上でのデメリットの中でも最も大きいのが「雇用が安定しにくい」というものです。
派遣社員は同じ職場で最長3年までしか働けない「3年ルール」があるため、雇用が安定しにくいのが現状です。
派遣は通常、事前に派遣会社に登録しておき、合う仕事が見つかった際に契約する「登録型派遣」の形態をとる場合が多いです。
希望の仕事が見つからない期間は待期期間が生まれ、その間は無収入です。
また一度契約が終了したら、次の仕事がなかなか見つからない危険もあります。
継続して働き続けることが叶わない場合もあり、安定した収入が得られない点は派遣の辛いところです。
また、個人単位の期間制限、事業所単位の期間制限が設けられており、原則は同じ職場で3年を超えて働く事が出来ない決まりになっています。
請負として働くメリットは?
請負として働く上での大きなメリットは「長期的に安定して働ける」という点です。
派遣社員と比較すると、正社員として請負業務に従事する場合、長期的に継続して働きやすい特徴があります。
業績悪化や経営不振を理由にリストラなどの人員整理が必要になった場合、正社員であればすぐに解雇される可能性は低いでしょう。
「派遣切り」という言葉もあるように、真っ先に解雇の対象となるのは、雇用期間が決められている派遣社員の方です。
契約期間が過ぎ更新してもらえなければ、必然的に契約終了となってしまいます。
ただし、フリーランスなど個人で受注し、請負を担う場合は、契約で定めた案件が終了してしまうと、仕事も無くなってしまいます。
請負業務は、個人で請負を受注する場合と、請負業者の社員として請負をする場合では、安定性に大きな違いがあります。
あくまで安定しているのは正社員の請負に限定されると覚えておきましょう。
請負として働くデメリットは?
請負として働く場合のデメリットは「労働条件が悪くなりやすい」と感じる方がいらっしゃいます。
請負は残業がかさんだり、休日出勤を強いられたりと劣悪な労働条件になりやすい点がデメリットです。
請負契約で提供する内容は成果物なので、期日までに完成させて納品する必要があります。
そのため、特に納期直前期などは従業員に対して無理な働き方を強いる可能性が高いです。
請負では雇用関係も指揮命令権も勤務先が握っているため、支配関係が生まれやすいという点もあります。
請負は長時間労働や、ストレスの多い労働環境に陥りやすいのです。
派遣や請負と似た意味を持つ言葉との違い
派遣や請負について調べていると、「業務委託」や「出向」といった言葉が出てくることもあるでしょう。
これらの言葉は、派遣や請負と意味は似ていますが、明確な違いがあります。
この機会に、派遣や請負と似た意味を持つ言葉との違いを押さえておきましょう。
業務委託とは
業務委託とは、企業と雇用関係を結ばず、企業と対等な立場で仕事をこなす働き方です。
業務委託は、仕事の進め方や働く場所、労働時間などは自分で好きなものを選べるため、自由度が高い働き方だと言えます。
雇用関係が無い点が、派遣や正社員型の請負との違いです。
個人事業主(フリーランス)が請負を担う場合は、業務委託の形態ととる場合があります。
出向とは
出向とは、出向元会社との雇用関係は継続させつつ、別の企業へ異動することを指します。
代表的な例が、親会社から子会社への出向です。
出向した社員は、出向先の指揮命令を受け働きます。
派遣とよく似た仕組みに感じられるかもしれませんが、両者には契約関係で大きな違いがあります。
出向では、出向元に加えて出向先とも労働契約を結ぶので、派遣元とだけ契約を結ぶ派遣契約とは、契約の相手方が異なるのです。
準委任とは
準委任とは契約形態の一つで、業務の一部を外部に発注する際に用いられます。
準委任契約では、発注者は受注者に「契約期間内に特定の業務を遂行すること」を依頼します。
請負と同じようにも思えますが、請負と準委任契約は提供する内容に違いがあります。
請負は成果物の納品が必要であるのに対し、準委任契約では成果物を完成させる義務は負いません。
あくまでも、期間内に業務をしっかり行うことを目的としています。
嘱託とは
嘱託とは非正規雇用の一種で、法律上明確な定義は存在せず、会社によって扱いは様々です。
嘱託社員は正社員とはちがう事前に定められた契約期間・労働日・労働時間・仕事内容で業務を遂行し、契約の延長が無ければそのまま契約終了となります。
派遣と似ていますが、雇用主に指揮命令権があるかという点で明確な違いがあります。
SESとは
SESとはシステムエンジニアリングサービスの略で、取引先にエンジニアを派遣することを指します。
こちらも派遣と似ていますが、指揮命令権の所在が大きな違いです。
SESでは指揮命令権は受け入れ先ではなく、雇用元にあります。
SESでは勤務先からの業務命令は禁止されており、勤務先から指揮命令を受ける派遣契約とは異なります。
SESは主にシステム開発の一部を外部に任せることから、準委任契約の一つだと言われています。
構内請負とは
構内請負は請負の一種で、発注者の敷地内で場所を借りて作業を行うことです。
構内請負では作業している場所が発注者と同敷地内でも、指示をするのは雇用関係がある請負主(受注者)です。
発注者が直接、作業する外注の職員へ指示する行為は偽装請負と言い、違法になってしまいます。
まとめ
まとめると、派遣と請負の違いは
- 指示や命令を誰から受けるか
- 契約の相手方に提供する内容が人か成果物か
の2点です。
会社員としての請負業務は、雇用主から指揮命令を受けますが、派遣では雇用主とは異なる派遣先企業から指揮命令を受けます。
また、請負は発注者に成果物を納品する必要がありますが、派遣契約で提供する内容は派遣社員という人間です。
派遣には自分の希望に合った働き方が実現しやすい、請負は雇用が安定しやすいというメリットがあります。
一方、派遣は安定しにくい、請負は過酷な労働環境を強いられる可能性がある点がデメリットです。
両者の違いとそれぞれのメリット・デメリットをよく理解し、あなたに適した働き方を選択しましょう。
代表 堀川 眞也
特定社会保険労務士・キャリアコンサルタント
大阪府生まれ。外資系、日系メーカー3社で、32年の会社員経験を経て独立開業する。会社員時代、110回の海外出張、22カ国を訪問、1,500日以上海外に滞在。
製品設計のため6か国のメンバーと一緒にプロジェクトを行った経験から、グローバルコミュニケーションを得意とする。海外での経験を活かし、社会保険労務士として、またキャリアコンサルタントとして外国人雇用、LGBTQの方の就労支援、企業内の異文化理解醸成などを行う。「幸せに働けること、働く事で幸せに」という信念のもと、すべての人が働きやすい環境作りのため奔走している。
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