「派遣の雇止めって違法ではないの?」
あなたは今こんなことを考えていませんか?
この記事では、派遣の雇止めが違法になる具体的な事例や、雇止めに遭った時の対処法などを解説します。
雇止めに遭い困っている方にとって役に立つ内容になっているかと思うので、ぜひご一読ください。
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目次
派遣社員の雇止めとは?雇止めの意味を解説
まずは派遣社員の雇止めとは、どのような意味をもつのか解説します。
言葉の意味を正しくとらえていないと、これから解説する事項がよく理解できなくなる可能性があります。
ブログや知恵袋では、派遣の雇い止めに関する質問も多いです。
雇止めは意味を勘違いしている人も多い言葉だと思われるので、チェックしてみてください。
雇止めとは
雇止めとは派遣社員や契約社員など有期雇用契約の従業員について、契約更新をせずに労働契約を終了させる行為を指します。
原則として、契約期間途中で従業員を解雇する行為は雇止めとは呼ばないので、注意してください。
派遣切りや解雇との違い
雇止めと意味を混同しやすい言葉として「派遣切り」や「解雇」があります。
これらの言葉が持つ意味は、以下の通りです。
- 解雇:労働契約の期間の途中に、派遣会社の都合で一方的に労働契約を打ち切る行為
- 派遣切り:派遣社員の労働契約において期間満了後に更新せず契約を打ち切る行為、及び期間途中に契約を打ち切る行為
雇止めと解雇は、労働契約を終了させるタイミングが、期間満了時なのか期間継続中なのかという点で異なります。
派遣切りは、雇止めと解雇、どちらの意味も含んだ表現です。
人材派遣の雇止めって違法ではないの?
派遣の雇い止めは、契約更新のタイミングで更新しないことを指すため、違法性はありません。
元々あらかじめ定められた契約が終わるタイミングであるため、契約を更新しないことはよくあることであり、契約終了することに全く問題はありません。
ただし派遣の雇止めに違法性がなくても、雇用状況や手続きなどによって、雇い止めが違法であるとされる場合もあります。
派遣の雇止めが違法になりうるケース
派遣の雇止めが違法になり得る代表的な4つのケースを紹介します。
1.30日前に雇止めの予告・通知をしていない
雇止めを行う派遣労働者に対して会社は何日前にその事実を告げるべきかというと、30日前に雇止めの予告・通知をする必要があります。
つまり1ヵ月以上前に雇止めの告知を受けていないと、違法行為を主張できる可能性が高いです。
厚生労働省によると、以下のように予告通知を行なわなければならないとされています。
雇止めの予告
使用者は、有期労働契約(有期労働契約が3回以上更新されているか、1年を超えて継続して雇用されている労働者に限ります。なお、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除きます。)を更新しない場合には、少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までに、その予告をしなければなりません。
引用元:厚生労働省「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」
30日前に連絡が必要なのは正社員の解雇の場合も同様です。
やむを得ず労働者を解雇する際は、少なくとも30日前に解雇予告が必要です。
もしくは、解雇予告をせずに解雇を行う場合は、30日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません。
また、解雇予告日数を解雇予告手当を支払うことにより30日より期間を短くすることが可能です。
2.雇止めの理由を明示していない
会社は雇止めを実施する場合、雇止めの理由を明示しなければいけないとされています。
つまり雇止めの際に、「派遣社員を雇い止めして何が悪い」というように理由を明示されなかったら違法の可能性が高いです。
雇止めの理由の明示
使用者は、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。
また、雇止めの後に労働者から請求された場合も同様です。
引用元:厚生労働省「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」
この時提示する雇止めの理由は「契約期間の満了」とは別の理由でなければなりません。
厚生労働省では、以下のような理由を参考として掲載しています。
・ 前回の契約更新時に、 本契約を更新しないことが合意されていたため
・ 契約締結当初から、 更新回数の上限を設けており、 本契約は当該上限に係るものであるため
・ 担当していた業務が終了・中止したため
・ 事業縮小のため
・ 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
・ 職務命令に対する違反行為を行ったこと、 無断欠勤をしたこと等勤務不良のため
等
引用元:厚生労働省「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」
雇止め理由の明示方法までは指定されていませんが、雇止めの理由に疑義がある時は書面で残してもらった方が後に争う際の証拠になり得ます。
3.客観的合理性・社会通念上相当とは言えない理由
雇止めの理由に関しては明示されれば何でも認められるわけではありません。
雇止めの理由には、客観的合理性・社会通念上の相当性が求められます。
従って、客観的合理性・社会通念上相当とは言えない雇止め理由の場合、違法となる可能性があります。
客観的合理性がある理由とは、すなわち誰が見ても解雇はやむを得ないと言えるような理由のことです。
また社会通念上相当性がある理由とは、労働者の行為や状況に照らし合わせて雇止めが相当な処分だと言えるかという視点です。
例えば労働者が仕事でミスをしたから雇止め処分とした場合、1度のミスで退職にまで追い込まれるとは客観的合理性・社会通念上の相当性、どちらの基準にも適合しないと考えられます。
また、妊娠や勤務態度の悪さを理由とする解雇も正当な理由として認められにくいです。
このように、雇止めの違法性を考えるにあたっては「雇止めの理由」がとても重要な意味を持ちます。
後のトラブルを避けるためにも、雇止め理由は確実に明示してもらいましょう。
4.更新の有無や判断基準を明記していない
更新の有無や判断基準など、契約時点で伝えるべき事項が明記されていないケースも違法の可能性が高いです。
派遣会社は、契約締結時に以下の事項を明示する必要があると定められています。
(1)使用者は、有期契約労働者に対して、契約の締結時にその契約の更新の有無を明示
しなければなりません。
(2)使用者が、有期労働契約を更新する場合があると明示したときは、労働者に対し
て、契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければなりません。
(3)使用者は、有期労働契約の締結後に(1)又は(2)について変更する場合には、
労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければなりません。
引用元:厚生労働省「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」
明示すべき判断基準の内容は「期間満了時の具体的な業務量により判断する」「労働者の能力によって判断する」などの書き方で良いとされています。
派遣社員が違法性のある雇止めにあった際の対処法
ここからは、派遣社員の違法性がある雇止めに合ってしまった場合、どうすべきかを解説します。
1.雇止めが違法だと主張するための証拠集めを行う
雇止めが違法だと主張するためには、まず証拠集めを行いましょう。
準備すべきは雇止め法理の適用があることや、雇止めの理由が正当ではないと言える根拠です。
雇止め法理の適用を示す証拠としては、勤続年数や自身の業務内容、更新回数や更新手続きの内容が分かるものなどが該当します。
また雇止めの理由が不当であると示す証拠としては、雇止めの理由が記載されたメールの文章や面談時のメモ、離職票等が考えられます。
確実に雇止め理由が分かる書類として、雇止め理由証明書を交付してもらう方法もあります。
使用者は雇止め理由の明示後に従業員から雇止め理由についての証明書を請求する必要があった場合、遅滞なくこれを交付しなくてはならないと定められています。
2.支援機関に相談する
「雇止めが違法かな」と感じたとき、相談できる支援機関があります。
相談できる支援機関として、各都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)、全国の労働基準監督署などに「総合労働相談コーナー」があります。
都道府県労働局では総合労働相談コーナーにおいて、労働問題に関する情報提供・個別相談のワンストップサービスを行っており、関連する法令・裁判例などの情報提供、助言・指導制度及びあっせん制度についての説明を行います。また、必要に応じて、下記の他機関と連携も行っています。
連携
都道府県(労政主管事務所、労働委員会)
裁判所
法テラス(日本司法支援センター)
労使団体における相談窓口など
引用元:厚生労働省「個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)」
3.裁判外紛争解決手続(行政ADR)
裁判外紛争解決手続(行政ADR)とは、派遣社員と派遣会社との間を含めた労働者と会社間での紛争を解決するための手続きを指します。
手続が裁判に比べ迅速かつ簡便で、問題を早期に解決する事ができ、無料で利用することができます。内容は非公開でプライバシーが保護されます。
裁判外紛争解決手続には、以下2つの方法があります。
1.都道府県労働局長による助言・指導
都道府県労働局長による助言・指導は、助言や指導によって解決の方向性が示されることで、労働者側と会社側の自主的な話し合いで解決を促すものです。
助言・指導の手続きの流れ
都道府県労働局雇用環境・均等部(室)又は最寄りの総合労働相談コーナーに助言・指導の申出を行います。
助言・指導制度についての説明を行います。助言・指導の申出を行った場合、都道府県労働局長による助言・指導が実施され、解決した場合は終了となります。
解決されなかった場合は希望に応じてあっせんへの移行又は他の紛争解決機関の説明・紹介を行います。
引用元:厚生労働省「個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)」
2.紛争調整委員会によるあっせん
紛争調整委員会の専門家が、労働者側と会社側の調整を行い、話し合いを促して解決を図る制度です。
あっせん手続きの流れ
都道府県労働局雇用環境・均等部(室)又は最寄りの総合労働相談コーナーに、あっせん申請書を提出します。 提出後、都道府県労働局長が紛争調整委員会へあっせんを委任します(※1)。
あっせん開始通知、あっせん参加・不参加の意思確認を行います。
参加の場合、あっせん期日(あっせんが行われる日)の決定、あっせんを行います(※2)。不参加の場合はあっせんを実施せず打ち切りとなり他の紛争解決機関の説明紹介になります。
引用元:厚生労働省「個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)」
4.派遣の雇い止めで裁判所に法にはかり判断してもらう
派遣の雇い止めで訴えたいと考えたら、労働審判の手続きを行いましょう。
労働審判とは、労働問題を専門に扱う審判官・審判員が問題解決の判断を下す制度です。
特別の事情がある場合を除き、3回以内の期日で審理を終結します。
労働審判の結果には法的な拘束力を持っており、労働審判は通常訴訟と比べ、少額で申し立てることができるのでおすすめです。
有期雇用契約期間等に関係する法律
ここからは、勘違いしやすい有期雇用派遣と有期雇用契約期間に関する法律・法規制の内容をいくつか紹介します。
派遣では「3年ルール」や「5年ルール」といった縛りが設けられていますが、これらのルールも法律で規定されています。
派遣の2018年問題を覚えていますか?
派遣の2018年問題とは、3年ルールと5年ルールの影響が出始める2018年以降に起こるであろう問題のことを指します。
つまり、3年ルールを定めた労働者派遣法は2015年に改正され、5年ルールを規定した労働契約法の改正は2013年4月施行のため、どちらも適用開始となるのが2018年以降であったことによります。
実際2018年を過ぎ、解雇などが頻発していることはないようですが、独立行政法人労働政策研究・研修機構が2019年9月10日に公表した「無期転換ルールへの対応状況等に関する調査」結果によると、無期雇用派遣への転換は道半ばである状況であることが読み取れます。
<全有期契約労働者のうち「無期労働契約に申込む権利が発生し、既に移行を申し込んだ」割合は 3.1%(「 無期労働契約に申込む権利が発生 」したと回答した者のうち 17.3%)>
有期契約労働者を対象に、現在の会社で無期労働契約への移行を申込む権利がどのような状態にあるか尋ねると、「無期労働契約に申込む権利が発生し、既に移行を申し込んだ」とする割合が 3.1%、「無期労働契約に申込む権利は発生したが、移行は申込んでいない」割合が 14.8%、「無期労働契約に申込む権利は発生していない」割合が 31.4%で、自身の権利の状態が「分からない」割合が 44.1%となった。なお、「無期労働契約
申込む権利が発生」したと回答している有期契約労働者のみでみると、「既に移行を申し込んだ」割合は 17.3%、「移行は申込んでいない」割合は 82.7%と算出された
引用元:労働政策研究・研修機構「無期転換ルールへの対応状況等に関する調査」
こちらの記事で、派遣の2018年問題について詳しく解説しています。
【社労士監修】派遣の2018年問題とは?2018年問題の概要とその後有期雇用派遣の3年ルールとは?
派遣の3年ルールとは、同一の職場・部署では有期雇用の派遣社員として最大3年までしか働くことができないというルールです。
3年を超過したら別の派遣先に移るか、引き続き同じ職場で勤務したい場合は正社員や無期雇用派遣社員など、働き方を変えなければなりません。
早く正社員になりたいと考えている派遣社員にとっては、3年経てば正社員や契約社員などの直接雇用へと雇用形態を変えられる可能性が高くなります。
ただし途中で別の課に異動してしまうと期間がリセットされて、また3年やり直す必要が生じるので注意してください。
ちなみに、派遣期間の制限を過ぎた最初の日を『抵触日」といい、例えば2020年4月1日に就業を開始した人の抵触日は2023年4月1日です。
こちらの記事で、派遣の3年ルールについて詳しく解説しています。
【弁護士監修】派遣3年ルールとは?直接雇用の可能性や制度の抜け道を解説!労働契約法の5年ルールとは?
5年ルールとは有期労働契約が反復して更新を続け通算労働期間が5年を超えた場合、労働者の申し込みによって、期間の定めのない労働契約に転換できる制度です。
5年ルールは2012年に改正(2013年4月施行)までにされた労働契約法によって、新たに導入されました。
5年ルールの内容を聞いて「あれ?3年経過すれば派遣社員は正規雇用に転換できるのでは?」と疑問を抱いた人もいるでしょう。
ここは混乱しやすいポイントですが、3年ルールは派遣先との関係を示したルールで、一方5年ルールは派遣会社(派遣元)との関係を規定しています。
有期労働契約の更新を続け5年を超えれば、派遣会社との労働契約が有期労働契約から無期労働契約へと転換できるという意味です。
派遣社員の労働契約は一般の労働契約とは異なり、勤務先ではなく派遣元である派遣会社と契約を取り交わします。
無期労働契約になるとは、派遣会社の期間制限のない社員として働けるようになります。
無期労働契約に転換すると3年ルールの適用対象外とされるため、同じ職場で3年以上派遣として働いても問題ありません。
3年ルールも5年ルールも、不安定な立場に置かれがちな労働者の保護を目的とした法規制となります。
こちらの記事で、派遣の5年ルールである「無期雇用派遣」について詳しく解説しています。
【社労士監修】無期雇用派遣とは?正社員との違いやメリット、デメリットを解説派遣社員の雇止めに関するFAQ
派遣社員の雇止めに関して、よく抱きやすい疑問をQ&A方式で紹介します。
Q.派遣の雇止めで残りの期間に有給は利用できる?
有給休暇は条件さえ満たしていれば、雇用形態にかかわらず派遣社員も取得可能です。
もちろん、雇い止め日まで有給休暇の日数が余っているのであれば、有給消化しても問題ありません。
派遣社員の有給日数は条件を満たしてさえいれば、1年ごとに法定の日数が付与されます。
- 雇用されてから6ヵ月が経過していること
- 算定期間の8割以上出社していること
上記の条件を満たすと、有給休暇日数が10日間付与されます。
そこからは1年6ヵ月目で11日、2年6ヵ月目で12日間と、毎年1日ごとに付与される日数が増えていく仕組みです。
Q.65歳以上でも雇止めに遭うことはある?
A.65歳以上など年齢を理由として、雇止めを行うことは違法性がないと考えられています。
高齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保を義務付けていますが、70歳までは努力義務となっており義務付けられていません。
そのため、65歳以上に達したことで契約更新を行わないことは認められます。
正社員のような無期雇用契約において定年制が設けられているのはご存知の通りですが、派遣社員も同様に年齢上限規制はあるのです。
派遣であれば、何歳でも働けると捉えないよう、注意しましょう。
Q.雇い止めは拒否できる?
A.基本的に雇止めの拒否は認められていませんが、違法な雇止めであれば拒否可能です。
例えば5年ルールに違反して雇止めを行おうとする会社の命令は、拒否できます。
5年ルールによる無期雇用契約への転換は従業員からの一方的な通知で十分なので、会社から許可をもらう必要はありません。
5年ルールを適用したいと要望を出したにもかかわらず、会社が受け入れずに雇止めまで行うのであれば、違法を主張できます。
雇止め理由証明書があれば違法を主張しやすいので、余裕があれば申請してください。
まとめ
この記事をまとめると、
派遣の雇い止めは、違法ではありません。
しかしながら、以下のケースに当てはまれば、雇い止めが違法とされる場合もあります。
- 30日前に雇止めの予告・通知をしていない
- 雇い止めの理由を明示していない
- 客観的合理性・社会通念上相当だと言えない理由
- 更新の有無や判断基準を明示していない
また、有期雇用派遣労働者には3年ルールが、有期労働契約には5年ルールがあるなど契約期間に制限が設けられているため、注意が必要です。
代表 三藤 桂子
(本名:三角 桂子)
社会保険労務士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
社労士とファイナンシャルプランナー、2つの資格を活かし、会社側・労働者側双方を理解した労務アドバイスを行っている。また、派遣元や職業紹介責任者に対しての講師を務める
三藤FP社会保険労務士事務所
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