【弁護士監修】派遣3年ルールとは?直接雇用の可能性や制度の抜け道を解説!

記事監修者小島国際法律事務所
工藤 敦子

派遣社員として働くにあたり、
「3年しか働けない」
「3年経ったら部署を異動しなくてはならない」
と不安に思ったことはないでしょうか。

派遣3年ルールは、派遣社員の雇用を安定させることを目的として設けられています。

この記事では、3年ルールのメリットやデメリット、派遣社員が安心して働けるよう、どのように仕組みが整えられているのかについて解説します。

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派遣3年ルールとは?

派遣3年ルールをご存じでしょうか。

派遣社員が働くうえで最低限知っておくべきルールのひとつです。

そもそもいつから始まり、すでに対象者は決まっているのでしょうか?派遣3年ルールの概要や対象などについて確認していきます。

制限の対象

平成27年の労働者派遣法改正によって、派遣雇用における3年間の期間制限ルールが設けられました。

派遣社員は、原則として派遣先企業の同じ部署や課などの「同一の組織単位」で、3年を超えて働くことができなくなりました。

ただし、同じ派遣先企業の異なる部署や課などに異動することにより、3年を超えて働くことができる場合があります。

派遣3年ルールの対象は、平成27年9月30日以降に労働者派遣契約を締結あるいは更新した派遣社員です。ただし、派遣会社から無期雇用されている派遣社員や60歳以上の派遣社員などは対象外とされています。

制限の内容

派遣3年ルールでは、すべての業務で「事業所単位」かつ「個人単位」の期間制限が適用されます。

事業所単位の期間制限

派遣先企業における「事業所単位の期間制限」については、同一の事業所単位(同じ派遣先企業の◯◯支店など)で派遣可能期間を超える派遣社員の受け入れが制限されます。

派遣可能期間は、派遣先企業で新たな労働者派遣を受け入れてから3年までです。

ただし、派遣先企業が自社事業所の労働組合から意見を聴いたうえで、3年を限度として派遣期間を延長することは可能です。また再延長も可能です。

個人単位の期間制限

派遣社員における個人単位の期間制限については、同一の組織単位(同じ派遣先企業の◯◯課など)で3年を超えて派遣就業することは認められていません。

仮に、派遣先企業で事業所単位の派遣可能期間が延長されても、個人単位の期間制限の延長はありません。

例)同じ派遣先企業で3年以上勤務できる場合と出来ない場合

たとえば、とある派遣会社から派遣された派遣社員Aさんが「総務課の会計係」で勤務していたとしましょう。

3年がたったら同一の組織単位で就業を継続できないため、派遣社員Aさんは総務課の会計係での業務は契約満了となります。

しかしながら、総務課から営業課などの別の課に異動させれば、派遣社員Aさんは3年を過ぎても同じ派遣先企業で働けます。課という単位だけでなく、部署異動についても同様です。

ただし、派遣社員Aさんの異動先が、総務課会計係から同じ総務課の庶務係であった場合は、同一の組織単位で就業していると見なされてしまうことになり勤務を継続できません。

ちなみに、この制限は「個人単位の期間制限」ですので、事業所単位の派遣可能期間内であれば、派遣会社が別の派遣社員Bさんを総務課会計係または総務課庶務係に派遣することはできます。

5年ルールとの違い

派遣に関するルールで「5年」というタイミングを耳にする方もいることでしょう。

派遣3年ルールと5年ルールは別の内容であり、区別する必要があります。

5年ルールは労働契約法における無期転換のルールをさし、同一派遣会社との間で有期労働契約が5年を超えて更新されたとき、有期契約労働者からの申し込みに応じて無期労働契約(期間の定めのない労働契約)に転換できるものです。

契約期間を定めないことによって、雇い止めの不安を解消するとともに雇用の安定を目指すことが目的です。

ただし、会社によっては、無期転換した有期労働契約者といわゆる正社員については、労働条件が異なる場合があります。

無期転換した有期労働契約者の給与や待遇などの労働条件は、原則として、直前の有期労働契約の条件が引き継がれます。

派遣会社との契約期間が3年の場合、1回目の更新時に無期転換の申込権が発生します。同じ派遣会社との契約が継続している期間中であれば、いつでも無期転換の申込をすることができ、次の更新時に無期労働契約に転換できます。

派遣3年ルールの例外

派遣3年ルールにおける派遣期間制限には例外もあります。

派遣期間制限の対象外となる労働者は下記の通りです。

  • 無期雇用派遣社員(派遣会社と期間を定めない雇用契約を締結している労働者)
  • 60歳以上の派遣社員

派遣期間制限が対象外の業務は下記の通りです。

  • 日数限定業務(派遣先企業における通常労働者の月間所定労働日数の半数以下かつ10日以下の日数で発生する業務)
  • 産前産後休業や育児休業、介護休業を取得する労働者の業務
  • 事前に終期が決まっている有期プロジェクトに関する業務

派遣契約において、必ずしも3年ルールが適用されるわけではないことは頭の片隅に置いておくとよいでしょう。

派遣3年ルールの雇用安定措置とは?

そもそも派遣3年ルールがなぜ始まったのか疑問に感じる方もいることでしょう。

なかには、3年たったら異動しなければならないと少々迷惑な制度と思っている方もいるかもしれません。

しかし派遣3年ルールは、派遣社員の雇用を安定させることを目的としています。

そのため、派遣社員が雇用安定措置を受けられるように仕組みが整えられています。

具体的な雇用安定措置の内容について確認してみましょう。

雇用安定措置の内容

同じ事業所の同じ組織に継続して3年派遣される見込みとなった場合、派遣社員は派遣会社から雇用安定措置(義務)を受けることが可能です。

1年以上3年未満の派遣見込みについては努力義務の対象として扱われます。

ちなみに、派遣会社で無期雇用されている派遣社員や60歳以上の派遣社員などは対象外です。

厚生労働省によると、雇用安定措置の内容は下記の通りです。

  1. 派遣先への直接雇用の依頼(派遣先が同意すれば、派遣先の社員となります)
  2. 新たな派遣先の提供(その条件が派遣で働く方の能力、経験等に照らして合理的なものに限ります)
  3. 派遣元での派遣労働者以外としての無期雇用
  4. その他雇用の安定を図るための措置(紹介予定派遣の対象となること等)

引用元:厚生労働省「派遣で働く皆様へ」

義務の場合は、派遣会社が1~4のうちから措置を講じる必要があります。

仮に1の直接雇用が実現しなかったときは、2~4のいずれかの措置を行わなければなりません。

努力義務の場合は、派遣会社が1~4のうちから措置を講じるように努めなければなりません。

雇用安定措置の希望状況

派遣社員がどのような雇用安定措置を希望しているのかを確認してみましょう。

厚生労働省委託の労働者派遣法施行状況調査(令和元年度実施)によると、派遣労働者が希望していた雇用安定措置の状況は下記の通りです。


画像引用元:厚生労働省「雇用安定措置について|雇用安定措置に関する希望(派遣労働者調査)」

3年の派遣契約を満了したあとにも、有期や無期、派遣先企業の切り替えなどのさまざまな形態によって、派遣で働き続けることを希望できることがわかります。

雇用安定措置の実施状況

派遣を辞めたくない方や派遣期間の延長を希望する方が気になるのは、実際に行われている雇用安定措置の実施状況だといえます。

厚生労働省委託の労働者派遣法施行状況調査(令和元年度実施)によると、派遣労働者に対する雇用安定措置の実施状況は下記の通りです。


画像引用元:厚生労働省「雇用安定措置について|雇用安定措置の実施状況(派遣労働者調査)」

派遣を辞めて直接雇用されることになった派遣社員が存在していますが、決して割合が高いとはいえない状況です。

また、雇用安定措置の仕組みが整っているにもかかわらず、派遣会社から雇い止めされてしまったケースや、条件が合わずに離職してしまう場合もあるようです。

雇用安定措置を受けるための注意点

雇用安定措置について派遣会社から提案されないケースも少なくありません。

したがって、雇用安定措置を受けられるようにするためには、派遣会社に対して派遣終了後も就業を継続することを希望することをお勧めします。

基本的に派遣会社は、キャリアコンサルティングや面談などで派遣社員の就業継続の希望を把握することになっています。

面談やコンサルティングの前に、雇用安定措置の希望内容を整理しておくことが大切です。

もし雇用安定措置の提案がなかった場合は、希望の措置を受け損ねないよう派遣会社に相談の機会を求めるとよいでしょう。

派遣3年ルールの抜け道は?

同じ場所で3年以上働きたいという方も当然いることでしょう。実は、派遣3年ルールには抜け道があります。早速、複数の抜け道について解説していきます。

抜け道1.部署変更や直接雇用

派遣3年ルールのもとでは、同じ派遣先企業の同一部署で継続して働けないため、同じ派遣先企業内で部署変更が必要となります。

たとえば、派遣先企業の財務課で3年働いた後に、同じ派遣先企業の人事課で働くなどであれば問題ありません。

この場合、勤務する環境は変わったとしても、同じ派遣先企業で働けることになります。

ただ、定期的に部署を変更するのが面倒だという方もいるかもしれません。

その場合は、派遣先企業に直接雇用してもらえれば、ルールの制限を受けなくなります。必要に応じて直接雇用を目指すことも検討してみてください。

抜け道2.無期労働契約に切り替える

派遣会社との契約を無期労働契約(期間の定めがない契約)に切り替えると、3年の派遣期間制限のルールが適用されません。

したがって、無期労働契約に切り替えることで同じ職場で働き続けることが可能です。

以下の3つの要件がすべて揃ったとき、無期労働契約への申込権(無期転換申込権)が生じます。

  1. 派遣会社との有期労働契約期間が通算5年以上になる
  2. 契約更新を1回以上行っている
  3. 現時点で派遣会社との有期労働契約が締結されている

同じ職場で働くことを希望するのであれば、無期転換の条件を確認したうえで、派遣会社との契約を無期労働契約に切り替えることを検討してみてはいかがでしょうか。

抜け道3.クーリング期間を設ける

クーリング期間を経れば、同じ派遣先企業の同じ部署で再度働くことができます。

クーリング期間とは、派遣3年ルールで設定されている期間制限の通算期間がリセットされる空白期間です。

クーリング期間でリセットできれば、3年働いた同じ派遣会社の同じ部署で働くことができます。

クーリング期間の具体的な日数は、3ヶ月超(つまり3ヶ月と1日以上)であり、個人単位・事業所単位にかかわらず同じ期間です。

ただし、クーリング期間は、無収入かつ、有給休暇などもリセットされてしまう点などデメリットもあるため注意が必要です。

派遣3年ルールに違反したらどうなる?

派遣3年ルールに違反したら罰則が適用されるのでしょうか?

派遣3年ルールを違反した場合のリスクを確認してみましょう。

派遣先企業に直接雇用の義務が発生する

派遣先企業が、期間制限に違反して派遣社員を受け入れた場合、その派遣社員に対して労働契約の申し込みをしたとみなされるケースがあります。いわゆる「労働契約申込みみなし制度」です。

労働契約申込みみなし制度は、派遣先企業に対する制裁の意味合いを持っています。

派遣先企業は派遣社員からの直接雇用の申し込みを拒否できず、結果として継続雇用に必要な人件費や社会保険加入の手続きなどが発生します。

行政措置や行政処分を受ける可能性がある

派遣期間の制限を超えて労働者派遣を行うと、派遣会社が許可の取消や事業停止命令、改善命令などの行政処分や行政指導を受けるリスクがあります。

派遣社員を対象とした罰則ではありませんが、違反を行っている派遣会社が適切な仕事を紹介してくれるとは考えづらいといえます。

派遣会社が行政処分や行政指導が出されていないかを確認して、ルールを適切に守っている派遣会社から派遣してもらうようにしましょう。

派遣3年ルールのメリット

派遣3年ルールは、派遣社員に3年ごとに異動する可能性がある仕組みであることから不自由に感じる方も少なくないでしょう。

ただ、雇用安定措置や定期的な異動によるメリットも見受けられます。派遣3年ルールのメリットを解説していきます。

メリット1.派遣先企業の社員になれる可能性がある

派遣3年ルールでは、雇用安定措置のひとつに派遣先企業への直接雇用があります。

派遣先企業が同意すれば、派遣社員を辞めて派遣先企業の社員になることができます。

ただし、直接雇用といっても必ずしも正社員として雇われるわけではありません。契約社員やアルバイトとして雇われる可能性もあります。

しかし、派遣社員として定期的に派遣先企業が変わることがなくなるため、派遣社員としての働き方に不安を感じている方は、直接雇用を目指してみることも検討するとよいでしょう。

直接雇用を希望するときの注意点

直接雇用を希望するときには注意点があります。

派遣会社に直接雇用の希望を伝えたけれど、派遣先企業から派遣会社に職業紹介手数料を支払えないことを理由に、直接雇用を断られてしまう可能性があります。

しかし、派遣期間終了後に派遣先企業の直接雇用を禁止することは労働者派遣法第33条2項に違反します。

派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者に係る派遣先である者又は派遣先となろうとする者との間で、正当な理由がなく、その者が当該派遣労働者を当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用することを禁ずる旨の契約を締結してはならない。
引用元:e-Govポータル「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律|第33条2」

派遣期間終了後、派遣先企業は、自由に派遣社員を直接雇用することができますので、派遣会社に職業紹介手数料を支払う必要はありません。

職業紹介手数料を理由に直接雇用を断られた場合は、法律をふまえながら派遣先企業に再確認してみるとよいでしょう。

ただ、契約期間中の雇用を禁ずる契約は認められています。派遣会社も安易に人材を流出させることは避けたいはずです。

派遣社員の引き抜きによってもめないように紛争防止措置を契約書で定めている可能性がありますので、気になる方は詳細について派遣会社に確認してみるとよいかもしれません。

メリット2.幅広いスキルを学べる

派遣3年ルールでは、3年ごとに異動することで様々な派遣先企業や部署で就業できるため、幅広いスキルを学ぶことが可能です。

一般的に一つの職場で単純作業を行う勤務が続いてしまうと、派遣社員はスキルアップしづらいといえます。

その点、複数の職場で勤務を経験することで、新しい知識や技術を習得できる可能性が高まります。

同じ仕事では飽きてしまうという方にも、派遣3年ルールはメリットとして感じられるに違いありません。

メリット3.職場の悩みをリセットできる

派遣3年ルールでは職場を定期的に異動することになるので、それまでの勤務環境の悩みも定期的にリセットできます。

職場の人間関係がうまくいっていない場合や、仕事の内容が自分にあっていないケースであれば、異動によってストレスから解放されます。

同じ場所で仕事を続けるのが苦手な方にとっては、3年という期間制限が有利に働くことでしょう。

派遣3年ルールのデメリット

派遣3年ルールでは雇用安定措置が整備されていますが、期間制限にともなうデメリットがなくなるわけではありません。

ここからは、派遣3年ルールのデメリットを解説していきます。

デメリット1.契約を切られることがある

派遣3年ルールでは、3年の期間満了を節目に契約を切られてしまうことがあります。

実際に契約が切られた方は存在し、悔しい思いを引きずってしまうことがあるようです。

雇用安定措置があるからといって、納得のいく結果にならないケースがある点について、最低限心得ておきましょう。

デメリット2.勤務地が変わってしまう

派遣3年ルールのデメリットとして勤務地が変わってしまうことが挙げられます。

厚生労働省委託の労働者派遣法施行状況調査(令和元年度実施)によると、新たな派遣先企業を提示されたが就業しなかった理由に対する回答では、「遠方だったから」が41.9%という結果で最も高い割合となりました。

たしかに、勤務地が遠方になってしまえば、就業場所に通うまでの肉体的・精神的負担が高まります。仮に仕事内容がマッチしていても就業意欲が湧きづらくなってしまうのでしょう。


画像引用元:厚生労働省「雇用安定措置について|新たな派遣先を提示されたが就業しなかった理由(2号措置)(派遣労働者調査)」

デメリット3.賃金が下がる可能性がある

派遣3年ルールでは、賃金が下がってしまうこともデメリットとして挙げられます。

厚生労働省委託の労働者派遣法施行状況調査(令和元年度実施)によると、新たな派遣先を提示されたが就業しなかった理由に対する回答では、「賃金が下がるから」が28.0%という結果で2番目に高い割合となりました。


画像引用元:厚生労働省「雇用安定措置について|新たな派遣先を提示されたが就業しなかった理由(2号措置)(派遣労働者調査)」

ただ、直接雇用された場合における賃金の変化については、下がったと回答した割合は10.1%でした。反対に上がったと回答した割合は27.9%になっています。


画像引用元:厚生労働省「雇用安定措置について|派遣先に直接雇用された場合の賃金の変化(1号措置関係)(派遣労働者調査)」

賃金が下がらないようにする(あるいは賃金を上げたい)のであれば、3年の期間制限に際して直接雇用を希望した方が無難かもしれません。

派遣3年ルールとあわせて知りたい失業保険の知識

派遣3年ルールで雇用安定措置が整えられていても、残念ながら雇用環境の悪化によっては雇い止めや派遣切りといわれる被害にあうケースも少なくありません。

したがって、突然仕事を解雇されたときのために、失業保険について把握しておく必要があります。ここから派遣3年ルールとあわせて知っておくべき失業保険の知識を解説していきます。

そもそも失業保険とは?

失業保険とは、正式には雇用保険制度といい、厚生労働省が管理している公的保険制度のひとつです。

雇用保険の給付には、「求職者給付」「就職促進給付」「教育訓練給付」、そして「雇用継続給付」の4種類に分類することができます。

これらのうち、離職後の失業状態・生活の安定をサポートする給付金が「求職者給付」です。

派遣社員で働く方で離職後の生活に備えたいのであれば、求職者給付という分類まで知っておくと手続きで混乱しづらくなるでしょう。

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派遣の失業保険(雇用保険制度)については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
【社労士監修】派遣社員は失業保険をもらえる?基礎から受給条件|注意点を紹介

失業手当の受給金額

失業手当とよく言われますが、これは雇用保険制度のなかの「求職者給付」の「基本手当」(失業手当)を指しています。

失業手当の給付額は、基本手当日額✕給付日数で決定されます。

基本手当日額は、失業手当の1日あたりの給付額であり、離職者の賃金日額をもとに計算されます。

また賃金日額には上限額が定められているため、離職時の年齢によって異なるので、あらかじめ把握しておくとよいでしょう。

基本手当日額の計算方法

基本手当日額の計算方法は、下記の通りです。

基本手当日額=賃金日額(退職前6ヶ月の賃金合計÷180)✕給付率(50~80%)

たとえば、離職時の年齢が29歳以下だったとしましょう。

仮に、賃金日額(退職前6ヶ月の賃金合計÷180の金額)が2,500円以上5,010円未満だったとすると、給付率が80%として計算されます。結果として、基本手当日額は2,000円~4,007円です。

基本手当日額には上限額が定められており、離職時の年齢が29歳以下なら賃金日額が13,630 円を超えている場合、基本手当日額は 6,815 円(上限額)になります。

このように基本手当日額は、離職時の年齢や賃金日額によって異なるため、失業手当の金額は一定ではありません。

受給するときに混乱しないよう、退職前に最低限シミュレーションをしておくことが望ましいでしょう。

失業手当の受給対象

雇用保険に加入していても、失業手当の受給対象でなければ、失業手当を受給できないケースがあります。

失業手当の主な受給要件は下記の通りです。

  • 原則として離職前2年間に被保険者期間が12か月以上
  • 雇用の予約や就職が内定及び決定していない失業の状態にある

ただし、倒産・解雇などで離職した場合や、期間を定められた労働契約が更新されなかったことで離職した場合などは、離職前1年間に被保険者期間が通算して6ヶ月以上であれば受給対象になります。

雇い止めや派遣切りにあってしまったときのために、受給要件を正確に把握しておきましょう。

失業状態の具体的な内容

厚生労働省によると、失業状態とは下記の条件を全て満たす場合をさします。

失業の状態とは、次の条件を全て満たす場合のことをいいます。
・積極的に就職しようとする意思があること。
・いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)があること。
・積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在職業に就いていないこと。
引用元:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~|Q2 雇用保険(基本手当)の受給要件を教えてください。」

したがって、妊娠や出産、育児、病気、ケガなどですぐに就職できない方や、家事や学業に専念したい方、同一事業所で就職、離職を繰り返しており、再び同一の事業所に就職予定の方などは対象外になります。

そのほかにも対象外となるケースはさまざまあるので、詳細についてはハローワークに確認するようにしましょう。

失業手当の給付日数

失業手当を受け取れる日数は、所定給付日数と呼ばれます。

所定給付日数は退職したときの状況によって違い、90日から360日の間で決定されます。受給できる期間は原則として離職から1年間です。

自己都合で退職した一般受給資格者に比べて、倒産やリストラなどの会社都合で退職した特定受給資格者の他、所定給付日数は比較的多くなります。

契約満了時の受給資格

派遣3年ルールの元で働く派遣社員が特に気になるのは、契約満了時の所定給付日数ではないでしょうか。

派遣の契約満了時の所定給付日数は、以下の要件によって変動します。

  • 通算の雇用期間が3年以上だったか
  • 契約開始前に契約満了後の契約更新に関する通知があったか
  • 従業員から契約更新の希望があったか

たとえば、雇用期間が3年以上かつ更新1回以上の場合、更新しないことを最初から通知されていなかったとしましょう。その場合、本人の更新希望があったとすれば、会社都合による特定受給資格者として扱われます。

反対に、更新を希望していなければ会社都合にはなりません。つまり、更新を希望することが会社都合にする方法だといってよいでしょう。

会社都合と自己都合では受給期間が大きく変わってきます。可能な限り所定給付日数を増やせるように、雇用期間や契約更新の通知、本人の希望などを明確にしておくことが大切です。

失業手当の給付の対象となる例

失業手当の給付について、さらに理解を深められるように、具体的な退職パターンを確認してみましょう。

例えば、3年の契約で勤務していた派遣先企業での仕事を、契約更新せずに3年未満で退職し翌月から別の派遣先企業での仕事を開始したとします。

その後1年経たずに退職した場合、間をあけずに就業しているので、各就業の雇用保険における被保険者期間を合算できます。

通常、雇用保険の資格を喪失してから再加入するまでに、1年以上の期間が空くと合算できません。

したがって、被保険者期間を合算したいのであれば、なるべく間を開けずに就業を開始するのが望ましいといえるでしょう。

派遣3年ルールに関するQ&A

派遣3年ルールの概要をお伝えしましたが、細かい疑問が解決できていない方もいるかもしれません。派遣3年ルールの気になるポイントについてQ&A形式で解説します。

Q1.抵触日とは?

抵触日とは、派遣期間の制限を過ぎた最初の日をあらわします。

法律で禁止されていることに抵触してしまうという意味が名称に込められています。

派遣3年ルールのもとでは、2020年4月1日から勤務した方の抵触日は3年後の2023年4月1日になります。

抵触日は、雇用契約書や労働条件通知書に記載されている場合が多いため、派遣会社と契約する場合は確認することをおすすめします。

もし記載が見あたらなければ、トラブルを防止できるよう派遣会社に確認しましょう。

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派遣の抵触日については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
派遣の抵触日とは何か?

Q2.育休中に抵触日を迎えた場合は?

派遣社員の中には派遣期間中に育休を取得するケースも少なくありません。仮に半年間にわたって育休を取得したとしましょう。育休中に抵触日を迎えた場合は復帰できないのでしょうか?

結論として復帰可能です。というのも個人単位の抵触日には3ヶ月のクーリング期間が定められているので、この期間を開けると抵触日もリセットされます。

したがって、派遣先企業に戻った日から新しく3年間の期間制限についてカウントがスタートします。

Q3.派遣会社を変更することで受入期間は通算される?

派遣社員が、派遣先企業の同一組織単位(同じ部署・課など)で就業していれば、途中で派遣会社を変更しても通算されて、派遣3年ルールが適用されます。

たとえば、派遣社員Aさんが派遣会社O社から派遣先企業X社の総務課に派遣されていた場合を考えてみましょう。

仮に派遣社員Aさんが派遣会社P社に移籍したとします。

間を空けずに派遣先企業X社の総務課に派遣される場合、同一の組織単位で就業を続けることになるため、受入期間が通算されます。

つまり、派遣社員は派遣会社を変えることで通算期間をリセットできないともいえるでしょう。

そのほか、派遣会社の変更以外に担当業務の変更などでも受入期間が通算されるケースもあります。受入期間を正しくカウントできるよう細かいところまでルールを確認することが大切です。

まとめ

この記事をまとめると、派遣3年ルールは、派遣社員が同じ事業所で3年を超えて働くことを制限する仕組みでした。

あくまで労働者の雇用を安定させることが目的であり、雇用安定措置の仕組みもあわせて整備されています。

雇用安定措置によって直接雇用が実現すれば、3年というルールに縛られることもなくなります。

ただし、雇用安定措置について派遣会社から提案されないケースもあるので、希望を伝え損ねないように注意してください。

この記事が、あなたの就職活動のお役に立てば幸いです。

記事監修者小島国際法律事務所
工藤 敦子

弁護士
成城大学卒・英国スウォンジー大学法学修士課程卒。国際・国内企業法務や知的財産権法、相続、労働問題、紛争解決の分野を取り扱う。
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